MRI撮像による潜在リスク
体内に植込まれたSNMシステムは、MRIが発する強力な磁場によって影響を受けるリスクがあります。そのため、これまでSNMシステム植込み患者さまの全身MRI撮像は禁忌となっていました。
SNMシステムのMRI撮像による潜在リスクには、次のようなものがあります。
MRI撮像による潜在リスク | 静磁場 | 傾斜磁場 | RF |
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1. 電極周辺組織の発熱 | |||
2. 変位力とトルク | |||
3. 電磁干渉 | |||
4. 神経刺激装置の発熱 | |||
5. 神経刺激装置の振動 | |||
6. 意図しない刺激 |
1. 電極周辺組織の発熱 | |
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導線がRFエネルギーを吸収することによって生じる電流が、電極から生体に放出され、電極周辺組織の発熱が起こるおそれがあります。電極周辺組織の発熱は、不可逆的な組織損傷や神経損傷、さらには恒久的な脊髄損傷につながるおそれがあるため 1、深刻度の高いリスクと考えられています。脊髄では、有害な温度が熱として認知されない場合があるため、MRI撮像中に電極周辺組織の発熱が起こっても、患者さまは医師に異変を伝えることができない可能性があります。 |
2. 変位力とトルク | |
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体内に植込まれる機器が磁性体を多く含む場合、静磁場に引き寄せられ、体内で移動するおそれがあります。また、神経刺激装置内の電子回路が破損するおそれもあります。神経刺激装置やリードの移動、電子回路の破損が起こると、交換手術につながるリスクがあります。 |
3. 電磁干渉 | |
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RFエネルギーの吸収および傾斜磁場への曝露によって神経刺激システムに誘導電流が発生し、それが神経刺激装置内の電子回路に流入することで、電子回路が破損するおそれがあります。電子回路の破損により、テレメトリ不全やリチャージ不全、又は意図しないプログラミングの変更が起こり、再プログラミング又は神経刺激装置の抜去が必要となるリスクがあります2。 |
4. 神経刺激装置の発熱 |
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傾斜磁場に曝されると、神経刺激装置本体に渦電流が発生し、ジュール熱によって神経刺激装置が発熱します。神経刺激装置の発熱により、神経刺激装置周辺組織の一時的な熱損傷につながるリスクがあります。 |
5. 神経刺激装置の振動 |
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傾斜磁場に曝されることで、神経刺激装置に発生した渦電流と静磁場との関係でローレンツ力が発生します。渦電流の向きは傾斜磁場の向きにより変化するため、ローレンツ力の向きも変化し、振動が生じるおそれがあります。神経刺激装置の振動により、神経刺激装置周囲の一時的な損傷につながるリスクがあります。 |
6. 意図しない刺激 | |
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RFエネルギーの吸収及び傾斜磁場への曝露によって発生した誘導電流は、神経刺激装置やリードを介して体内に流れ、意図しない刺激を生じさせるおそれがあります2,3。 |
出 典
- De Andres J, Valía JC, Cerda-Olmedo G, Quiroz C, Villanueva V, Martinez-Sanjuan V, de Leon-Casasola O. Magnetic resonance imaging in patients with spinal neurostimulation systems. Anesthesiology. 2007 Apr;106(4):779-86.
- MRI Standard Letter, Spinal Cord Stimulation Systems, 2011.
- Risk Management Report for SureScan (MRI compatible) Implantable Neurostimulation System and 1x8 Vectris Percutaneous Leads. NDHF1173-126742.